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news 2008.5.17

■開港30周年 成田に吹く風

◇旅客争奪「羽田」も脅威

 一本数万円のワインや有名シェフの料理。成田国際空港で今、航空会社が激しい"地上戦"を展開している。日本航空や全日本空輸、エールフランスなどが上級顧客用ラウンジを相次ぎ改装。ホテル並みのサービスを競う。4月末に約3億円をかけて改装を終えた米ノースウエスト航空は、「成田は、官公庁需要やビジネス客など収益率の高い旅客が、アジアの他空港より圧倒的に多い。こうしたし優良旅客の囲い込みが狙い」と説明する。
 成田のラウンジ改装はここ2年で14ヵ所。観光学などに詳しい筑波学院大学大島教授は「航空会社にとって成田が依然重要拠点である証し」とみる。
 この10年、アジアで巨大空港の整備が進んだなかでも、成田は一定の地位を保ってきた。国際民間航空機関(ICAO)の統計では、国際線旅客数は1997年以来8位が定位置。統計基準見直しもあり、2006年実績は6位の見通しで、アジアでは香港に次ぐ。だが皮肉にも、海外との競争をしのいだ成田の自信は「羽田」の再国際化の前に揺らぐ。
 3月の成田上海線の利用者は、ギョーザ事件などで前年同月比32%減の約4万1500人。一方、昨年9月就航の羽田上海線は1万6000人強とピーク時の10%減どまり。成田国際空港会社の森中社長は、「成田は逆風の影響を受けやすい観光客が多い」と、羽田へのビジネス客流出を危惧する。
 「格安航空会社の乗り入れ余地がないなど、日本の空の自由化の遅れが成田を助けた面もある」(大島教授)。それでも羽田では10年に少なくとも3万回分、国際線が増える。アジアの巨大空港も一層の自由化に身を投じる。次の10年で、成田は国際空港としての真価を問われる。

 成田国際空港が20日で開港30周年を迎える。建設を巡る国と住民の対立の歴史から、滑走路3本を備える当初計画実現は遠い。他方、他の巨大ハブ空港との競争をしのぎ、年間約3500万人が使う世界有数の空港であり続ける。節目の年の風向きを読んだ。
<2008年5月14日 日本経済新聞より>

◇共栄へ新たな「旅路」

 「我々の有機野菜の値段は中国産の5倍でも、安全性や味の評判は上々」。千葉県成田市の有機野菜卸売会社「生産者連合デコポン」の井尻社長は、2年前に始めたシンガポール向け輸出に自信を見せる。
 同社は日本食ブームを背景に瞬の15品目を詰め合わせて輸出。成田のおひざ元であることは、輸出に便利な「地の利」と映る。
 空港へのこうした評価が広がるには長い時間を要した。建設閣議決定から強制収用断念まで27年。その後の国と地元の対話で、ようやく地域と空港の「共生」が口の端に上った。
 今、地元では「共生から、共に栄える『共栄』へ」との声も聞かれる。芝山町もそうした自治体の一つ。町域の8割が屋外での会話もままならない騒音区域であることと、工場誘致などの恩恵を比べた結果だ。
 空港周辺の4市5町は空港圏全体での発展を目指す会議を設置。かつてタブーだった発着増問題も、成田国際空港会社が3月には「(平行滑走路延伸で)理論上、今野1.5倍の最大30万回に増やせる」と説明するに至った。
 ただ、空港用地内の未買収地3.6haを巡る交渉は今も難航。反対派の建物などが残る。誘導路は「への字」に曲がったままで、発着回数増はおぼつかない。
 元反対派幹部で、国との対話を進めた石毛さんは「『共栄』は地域と空港の今後を考えるうえで最適のキーワード」と話す。ただ、「羽田の再国際化への対抗から『発着回数増で地域と空港の共栄を』と訴える人もいるが、発着増は地元には騒音増。言葉の独り歩きには注意が必要」と注意を促す。
 空港会社は昨秋初めて、若手社員向けに「成田闘争」の歴史研修を開いた。若手社員は「自分の生まれる前に様々な人の血と汗が流れ、今の空港がある」と実感したという。「共栄」の模索は始まったばかりだ。

<2008年5月17日 日本経済新聞より>





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